昨日の日記「どん底」つながりで...
今日の朝日新聞(夕刊)に、岩井克人氏が「底」とは希望である、ということを書いていた。
そういえば、前のブログ道楽日記に、岩井克人氏のヴェニスの商人の資本論について
書いたことがありました...。
今は道楽日記はプライベートモードになっているので、ここに載せておきます。
...道楽日記より...
「ヴェニスの商人の資本論」2008年3月3日
本を人に勧めるときに、いつも気になることがある。
読書というのはいつも、非常に私的な体験だ。
私の「いい」は、あなたの「いい」になるだろうか。
感動も、単純にいいなと思うところも、自分の体験や
今自分が疑問に思っていること、抱えている「問い」を重ねて読んでいる。
だから発見があるし、涙が出る。
なぜこの本がいいのか、ということを話そうとしたときに
自分の体験を話さないで語る事は、とても難しい。
おそらく、もっと高度な挑戦をしかけようとするならば
あなたの体験を通じて話をする、ということができたらより素晴らしいけれども
それができる相手は、私にとってとても仲の良い
コミュニケーションがよく取れている相手に限られる。
それにそれはブログでは無理だよね。
そうなると今のところ、本の紹介と言ったって私の体験から語るしかない。
今日の本は岩井克人氏の「ヴェニスの商人の資本論」
ラジオディズの平川さんが教えてくださった本。
(いつも素晴らしい出会いをありがとうございます)
平川さんが教えてくださる本は、難しい本が多いので
一日4冊読むと決めている私もペースが落ちる。(2008年当時、今はそんなに読んでません)
この本は読破するのに2週間以上かかってしまった。
日本語だから、読むことはできるのだけれども
海老と納豆と、ワインとチョコレートでできている私の脳みそ
(↑好物です、適度に与えてください↑笑)には理解するのに、時間を要した。
知らない人名や、思想がもぐら叩きのように多発してそのままにしておけないものが多かった。
この本を読むために「レヴィストロース入門」を買ったし
「マルクスだったらこう考える」を読んだ。
だからと言っても、んだば、急にはわからねけども(なぜか急にニセ東北弁)
ため息とともに、今まで読んでいた本に
どれだけ自分の知っていることが書かれていたのか思い知る。
まず最初の章ではこの本の題名の通り
シェイクスピアの「ヴェニスの商人」の話を使って資本主義の発展はいかにしてなされたか
つまり「利潤」はいかにして生まれるか、ということが語られる。
ヴェニスの商人のお話は、最近アル・パチーノ(シャイロック)出演で映画化されているし、
ご存知の方も多いと思うけれど
一応あらすじだけ説明すると
<あらすじ>
ヴェニスの商人アントニオに、友人のバッサニオがお金を借りにやってくる。
バッサニオはポーシャに一目惚れし、どうしても求婚したいのだが、お金がない。
アントニオも、手元にまとまったお金がないので
バッサニオのために金貸しシャイロックのところへ金を借りに行く。
シャイロックはユダヤ人の商人で、高い利息を取る。
日頃の恨みもあり、シャイロックは万が一返済不能の場合は
胸の肉1ポンド切り取らせるという条件でアントニオに金を貸す。
ポーシャのところにはバッサニオ以外にも求婚者が押しかけていた。
求婚者には、金、銀、鉛の3つの箱のうち正しい箱を選べば求婚が叶うというテストが課せられる。
何人もの名のある求婚者が失敗し去って行く中でバッサニオはもっとも地味な鉛の箱を選び、ポーシャを射止める。
ここで大問題が発生する。
アントニオの商品を乗せた船がすべて沈没し借金の返済ができなくなったのだ。
シャイロックの返済条件は「胸の肉1ポンド」つまり死を意味する。
アントニオの元に急ぐバッサニオ。
ここでポーシャが大活躍する。
男装して裁判官に変装し、法廷に乗り込むのだ。
この裁きが、名場面として知られる。
「肉を切り取るのはよいが、血は一滴も流してはならぬ。この証文には肉1ポンドとのみ書いてある。血を流してよいとはどこにも書いてない。」
ポーシャはまるで遠山の金さんばりの大見得をきり、物語は一気にクライマックスへ。
アントニオは勝訴し、一命を取りとめ更に、船の難破はすべて間違いだったという知らせが入り、めでたしめでたし。
このお話は、私には懐かしいシェイクスピアの物語。
でも、岩井氏は資本主義の原理をこの物語に見たのだ。
利潤を生むのは何か。
当たり前だが、それが貨幣を媒介にしたとしても
等価交換を繰り返すだけでは、絶対に利潤は生まれない。
労働によって、加工された商品でも、労働報酬が発生するのだから理論的には利潤が生まれる事はない。
しかし、わらしべ長者的に、利潤が増えていくのはなぜか。
それは「差異」によって発生する。
ここから先は、私の説明能力の範囲を超えているので、興味のある方は本を読んでみてください。
私は演劇が大好きだから、この1章はとても入りやすかった。
半分は自分の知っていることが語られて、そこから未知の世界に案内されるという体験。
文学と経済と掛け合わせは、読みながら「おぉっ」と声が出るくらい興奮の楽しい読書体験になった。
茂木健一郎さんが、どんなことを話しても、結局脳の話になってしまうように
きっと岩井克人氏の話も、全部経済の話になってしまうのだろう。
(智慧の実を食べようでは、確かジェーン・オースティンの「自負と偏見」についても、同じように経済学者の視点で語られていたと記憶している)
それが素晴らしいし、新しいし、面白い。
読み終わった私には、まだまだ理解しきれていない感覚が残り
きっとこの本はまた時間をおいて読み返すことになると思う。
岩井克人さんも、1度読むだけの本はベストセラーリストを見ればいいわけで
2度読める本のリストがあったほうがいいよねと、智慧の実を食べように書かれていらっしゃいましたし、一回で理解できなくても、どうかお許しくださいませ。
...以上道楽日記より...
久しぶりにこの本を読み返したくなった。明日持って行こう。